また聴こえてきた声について

妻が自宅で仕事の準備をしていた時です。普段ほとんど会話をしない妻と義母ですが、珍しく話し声が聞こえてきました。私は洗面所にいたので内容はほとんど理解できませんでしたが、ひとつだけ聞こえたものがあって、それが「ちゃん子」でした。

その後しばらくして、妻から切り出されました

「お母さん、また聴こえ始まったかもしれない・・・」

「やっぱり。さっき、ちゃん子の名前が聴こえてきたけど・・・」

「そうそう。なんか金よこせ!とか泣いてきたからとか?その権利があるとか?訳がわからない話してたみたい」

その話は一旦そこで終了しました。実は、義母のこの手の話を掘り下げていくと妻のストレスが溜まっていくとのことで、夫婦関係に亀裂がはしる元でもあるので、ここ最近のアンタッチャブルなネタになっておりました。

さて。しばらくしてから義母にこの話の中身を確認することにしました。

「お義母さん。もしかして聴こえはじまったの?」

「そう。一昨日くらいかな〜。11/29日?朝方にちゃん子とアミダがまたここら辺に来てね。ちゃん子が泣いてたの。騙されてるんだよ」

「そうなんだ〜」

「私、ちゃん子に面倒を見てもらうから、財産譲って譲ってとお願いされたのね。私は最後までみてくれるならと財産放棄したのね。財産は元に戻して、私が半分もらって、ちゃん子と妻とで残りの半分を分けてもらおうかなと思う。でもそうなると裁判になるでしょ?」

「・・・」

「お義母さん、財産放棄したって言うけど、それ言い出したのお義母さんだったよね?」

「違うよ。わかめ君に騙されたのね。依頼人に頼んだのもわかめ君とちゃん子なのね。アミダもそうなの・・・」

「・・・」

ここから先もずっと続きましたが、意味不明過ぎて頭が混乱してくるので止めます。

義母はまず、こういう風になると考えが混乱するようで、今の自分の立ち位置をすべて忘れてしまいます。

  • ひとりでは食事の用意から管理もできないこと
  • スケジュール管理もできないこと
  • 通院、薬の管理もできないこと
  • 財産管理もできないこと
  • 衛生管理もできないこと
  • 難聴で電話、会話でのコミュニケーションができないこと
  • 排泄に関して、重大な懸念があること(お漏らししたまま倒れていたりする)
  • 入浴について懸念がある(溺れてしまったこと)
  • 生命に関わるようなことでも忘れてしまってやること(一度お風呂で溺れてから、自分で勝手にお湯を張って、知らない間に入っていたなど・・・)

という感じです。担当の医師からも重ね重ね「ひとり暮らしではないですよね?」と念押しをされるほど、誰がどうみてもひとりで生活は無理な状況です。仮にひとり暮らしをさせられても、毎日必ず訪問して、そちらで面倒をみることになるのが目に見えているのが実情。同居よりさらに大変になりますし、見えない時間に危険が増すという最悪のパターンしか思い浮かびません。

こういうことを全てなかったことにしての発言なのです。

もはや慣れっこになったので、義母が今抱える心の闇だと思って、淡々と聞いていくのです。ひとの心ってどうなっているのかさっぱりわかりませんけど、ここまで支離滅裂な感情ってどれほどのストレスを受けたらここまで壊れたのだろうか?と感じてしまいます。

この幻聴、続かなければいいなぁ・・・そう思ってしまいました。

義母の精神状態が悪化してきました

朝から、義母に何度も呼び出しをされます。徘徊は治まったものの今度は幻聴で外出も怖くなったようでした。薬を強くした影響からか呂律も回らず、私がイメージするところのまさに、“精神病患者”のようだった。

「外にいるのわかる?聞こえない?」

「何が居るの?私には聞こえないけどね」

「あ!いま、ここの裏にいるよ」

「そうなんだ〜」

「怖くて外に行けない」

「しばらくしたら居なくなると思うよ」

「嫌だわ〜」

こんな会話を毎日繰り返しています。否定しても全く意味はないので、慣れっこになった私はむしろ会話を盛り上げてコントロールします。

「外に居ても、家の中には入ってくることはできないから安心だね」

「わかった。ごめんね変な話をして」

「いや全然。アミダはここまで車で移動してくるの?」

「そうみたい。車で近くまできて歩いてここにくるみたい」

「ちゃん子も乗せて連れてくるのかな?」

「そうだと思う。一緒になって私を攻撃してくるの。家を返せ〜!って。クソババアなんて言うんだよ。アミダに騙されて昔のちゃん子ではなくなったんだよね」

「アミダが悪いんだね」

「そうね〜」

「もう少しするとアミダはいなくなると思うよ」

「そうだね。ごめんね心配かけて」

「全然問題ないよ。落ち着いてね」

妻はこういう会話がはじまると怒り出します。「なに訳わからない話ばっかりしてんの!」という感じに。昔みた自分の母とは別人なのだから、それだけショックなのでしょう。

私は血の繋がりがないので、当然義母の昔を知らないし、それほどの愛着もない分、客観的かつ冷静に義母をみることができます。この感情は介護をする上でプラスになっていると思います。

そもそも。この得体のしれない会話にどれだけまともに付き合ったとしても、解決もしなければ治りもしません。であれば怒ったところで意味があるのか?また真剣に受け止めたとして、この意味不明な会話に終点はないわけで。これまた時間の無駄じゃないかと思っています。だから感情を殺して機会的に処理するのがベスト。

まだほん怖のワンシーンには至っていないので、前回入院前よりはマシです。

徘徊がはじまりました

妻と買い物から帰って玄関の鍵を開けると既に鍵があいていました。義母がお散歩でもしていたのかな?と思いました。義母の部屋の引き戸が開いていたので中をチラッと覗くと部屋にはいません。

「お義母さんいないけど、トイレかな?」

「そうじゃない?」

トイレの電気を確認すると中にはいない模様。

「あれ?散歩かな?」

「そうじゃないの」

しばらくすると戻ってきた。息を切らしています。何かあったような深刻な顔をしながら話しかけてきました。

「またアミダが後ろの道路を歩いていたの。私の名前を大声で呼びながら練り歩くんだよ」

「ちゃん子も一緒に連れて歩くの。助けてぇ〜って言うから心配になって助けに出かけたの」

「そうなんだ〜」

「大丈夫かしらちゃん子。アミダに利用されているんだわ」

「ちゃん子はこのあたりには住んでいないよ」

「歩いてきたのかしら?」

「50Kmも遠くに住んでいるから無理でしょ」

「歩いてきたって聞こえるよ」

「そうなんだ〜」

「私のこと「お前はゴーボーだぁ〜」って責め立てるんだよ」

「・・・?ゴーボー?・・・(傲慢と横暴の合体だろうね)」

「そう、お前はゴーボーだぁ〜、ゴーボーだぁ〜って」

「嫌だわ」

「嫌だね(幻聴が出ているお義母さんがね)」

今回は、前回の入院とは違うタイプの幻聴のようです。前回の入院では徘徊はありませんでした。今回はじめての行動なので、少し驚いています。もしかしてこの後しばらく続くかなという雰囲気があるので要注意だと思いました。

ゴーボーって・・・お義母さん、ありそうで間違っている単語勘弁して。

幻聴が復活してきた

恐れていたことが起きつつあります。幻聴の復活です。嫌だな〜。またリアルほん怖かなぁ。

「最近、また聞こえはじめたのよ」

「あの声が?」

「そう。お前を監視しているから逃げられないぞ〜(実際にはこの「ぞ〜」が沈み込むように長いです)って言うの」

「へ〜」

「あとは、ちゃん子がそこの近くの公園まできて泣いているの。「母さん」って」

「なるほど〜」

「アミダが一緒になって太鼓を鳴らして練り歩くのよ。近所迷惑になるから、私さっき出ていってやめさせようとしたの」

「外出したの?」

「そう」

「うそ?気がつかなかった(徘徊だな)。義母さん、できればやめて欲しい。行先すらわからないと万が一何かあっても対応できないからさ」

「嫌だわ。なんであんなに大声出して泣き喚かなきゃならないんだろう?」

「(人の話聞いてないし・・・)」

この話をまともに聞いていると、延々終わらないので強制終了しなけらばなりません。義母は幻聴の話をする時は相手の話を全く聞こうとしません。自分の頭の中にある聞こえた言葉をとにかく一方的に吐き出したいのかもしれません。そしてこちらが止めなければ同じことを無限ループします。

もう確定だな!とわかってはいますけど、わずかな望みにかけて治るように祈ります。

入院中の義母の様子

新型コロナ下ということもあり、病院は面会禁止でした。差し入れや生活用品の直接受け渡しも禁止。看護師さんを介して渡すという徹底ぶりだったので、義母の様子はほぼわからず。ちなみに入院してから1ヶ月後あたりに、生活用品の受け渡しの際に義母から渡されたメモを読んだ限り、症状は全く改善していない状態なのは理解していました。

  • 誰かに盗聴されている
  • 発信器を体内に埋め込まれている
  • それを追って監視者がこの病院の外にもいるし、病棟にも入ってきて見ている

全編頭がおかしくなりそうな内容でした。病院食のプリントの裏紙3枚にミミズが這うような文字でビッシリと書かれていた。これが結構おどろおどろしく、不気味でした。

この状態のまま義母が戻ってきたらどうなるのだろうか?妻とはその話題でもちきりでしたし、今後の同居生活に暗いイメージしか持てなくなっていました。

義母が話をしていたことの事実確認で警察を訪ねた

義母が入院前に話していた内容で、ずっと気になっていたことがあります。

  • 夜中に交番に通報してきてもらったこと
  • 夜中にアパートを管理している不動産に電話したこと

不動産については、ちょっと敷居が高くて躊躇いました。「だから何?」って言われたらそれまでなので。あくまでも私の興味本位ですから、不動産屋さんにしてみたらそんなのどうでも良い話ですからね。義母が言っていることのどれが本当でどれが妄想なのか?というところがどうしても気になってしまって。

最寄りの交番だと思うので、実家を管轄する交番へ電話をしました。本人以外の場合、本人確認をしないと個人情報が絡む話はできないと言われたので、直接訪問することに。交番で本人確認が終わって本題へ

「たまよ(義母)の義理の息子なのですが、お尋ねしたいことがありましてきました」

「どういった件でしょうか?」

「義母の話によると先日、夜中に電話をして隣家からの騒音が煩くて困っていると交番に通報したと申していたのですが、それが事実確認かどうかの確認でした」

「あ〜。あれは覚えています。結果から言うと、まず夜中の2時に通報があって、私と部下の女性の2人で訪問しました。家の中と敷地内を確認しましたが、騒音や迷惑行為は現認できませんでした。ご本人にはその旨を伝えたことと、様子からして少し混乱したようにお見受けしたので、近いうちに一度病院へ行ってみてはどうですかとお伝えしておきました」

「義母の話は本当だったんですね」

「その後、たまよさんどうなんですか?いつもお孫さんの件でお電話あったのですが、夏頃からぱったりと途絶えていたので、うちの交番でも気にしていたんですよ」

「孫は娘夫婦ですが、引越ししたので今は義母の独居になっているんですよ。ちなみに、今、義母は入院しました」

「あ〜そうだったんですか。いや、訪問した際の会話の内容がなんと言うかとても混乱していて、部下がなんとかなだめて落ち着いた感じだったので、その後心配していたんです。入院されたということで安心しました」

「ご心配ありがとうございます。ご迷惑をおかけしました」


というような感じでした。電話していたのは本当だったんだ・・・と少し驚きがありました。ということは、不動産に真夜中に電話したんだなと。確か個人経営の地元の不動産だったはずなので、迷惑かけただろうなと。なぜかというと、義母の話のなかで「不動産屋は、何言ってるんだ?って感じで、アパートの住人に確認したけどそんな事実は無いって言ってたの」という話を聞いていたので。恐らく怒らせていたのだと思います。そりゃそうだ、訳のわからない話で突然真夜中に連絡されたら、誰でも驚く。

義母の人物や病気について

先日、入院することになった義母について話してみたいと思います。

義母の基本情報

  • 70代後半
  • 155cm/40kg程度。痩せ型
  • 夫(私からすると義父)(8年前に他界)
  • 趣味:食べること・テレビを見ること
  • 性格;温厚
  • 長所:滅多に怒らない。常にフラットな感情なところ。人の世話を焼くのが好き
  • 短所:天然ボケ・不衛生・余計な一言がとても多い・奇行

私からみた義母はこのような人物だと思います。同居する前の印象は、温厚な人柄で、天然ボケだけど悪意がない人という感じでした。同居後も義母に変化はありませんが、私の主観だけが180度変わっただけです。この話は追々していくことにします。

義母の病歴

  • 妄想性障害(通院・治療中)
  • 糖尿病(通院・治療中)
  • 関節リウマチ(通院・治療中)
  • 難聴(定期検査で通院中)
  • 心筋梗塞(通院中・年1回の定期検査)
  • 歯肉炎(治療済みで定期検査で通院中)

この中で、特に影響があるものは妄想性障害だと思います。他の病気については、治療・対処をすればどうにかなるものですし、周囲に大きな迷惑がかかるような病気ではありませんので。ただ、精神疾患だけは違うんですね。これは本当に厄介ですし、周囲も振り回されるということを、身を以て体験することになりました。病気の話についても、介護の日記上で嫌というほど書いていくので、追々お話していきたいと思います。

義母を精神科へ連れて行くことに

昨日から義母の面倒を我が家でみることになりました。今日の午前中に妻が休みを取れることになりました。手分けをして作業をすることに。妻は実家から義母が使うだろうものを持ってくる担当。私は義母を病院へ連れて行く担当です。病院は義母がかかりつけの大学病院が良いだろうということで、妻が事前に予約を入れてくれました。

大学病院の精神科へつきました。義母は不安そうな様子。と言っても、義母の不安は我々が思いつくような「どんな病気なのだろう?」とか「何か重い病気なんじゃないだろうか?」の種類ではなく

「なんか、アミダが着いてくるんだよ。そこらへんに居るの」

こっちの不安だったようです。

このアミダというのは、阿弥陀様のことだと思います。擬人化されてます。義母の話によると、アミダという人物が居て、彼には奥さんと子供二人がいるそうです。隣のアパートに住んでいたと。彼らが義母に様々な悪さをしていたと。簡潔に言うとこういう話だそうです。

義母の不安というのは、このアミダが付きまとってくることだそうです。自分が病気だとは1ミリも思っていませんので、それは当然なのでしょう。だから病気が怖いとかではなくて、病院まで着いてきて、太鼓を鳴らして義母の名前を大声で叫んでいるのが恥ずかしいとか、恐ろしいとか。そういう恐怖を感じていたそうです。

私から言わせれば、こういうことを真顔で話す義母の方が100倍恐ろしいのですが。義母の診察の前に、一通りの事前検査がありました。同行できなかったので詳しくはわかりませんが、頭部CTや血液・心電図などの検査を行なったようです。持病は糖尿病と心筋梗塞(発症前に発見したので、現在治療中)、リウマチを抱えています。その関係で血液検査なども行なったのかな?と思いました。その間に妻が合流しました。そして義母の診察がはじまりました。

「どうされましたか?」

「声が聞こえると訴えています」

「どのような?」


私たちは、今まで義母から聞いてきた”聞こえる声”のことを先生に伝えました。

「幻聴ですね。原因はいろいろあると思いますが、今のところはこれだという判断はできません。若い頃、統合失調症などの既往はありましたか?」

「恐らく、無いと思います」

「そうですか。もし、お母さまがもう少し年齢が若くてこの症状で来たとすれば、統合失調症という診断になるのかもしれません。ただし、年齢からして今発症したのであれば、妄想性障害というような感じなのかもしれません」


「とりあえず、同居の方への危害や、ご本人の錯乱のようなものもまだ無いようですから、投薬を行って様子をみるという方法になると思います。それでも改善しないようでしたら、入院して治療するというような流れになるかと思います」

診察が終わりました。処方箋を用意されて帰宅することに。だいたい想像していたような病気だなと思ったことを覚えています。私的には認知症とか鬱とかなのかな?という素人判断をしていました。

チャン子が出て行ったことを含め、これまでに義母にかかるストレスは相当のものだったのは理解していましたから、恐らくこれらが原因となって病気になったのかな?と思いました。

とりあえず、自宅療養ということですが、義母が頻繁に訴える「また声が聞こえた!」という声と、怖がる顔を見続けなければならないのかと思うと、急に浮かない気持ちになりました。

義母、ふたたび突然の来訪

義母がふたたび来訪しました。今度はいったい何があったのだろうか?

「もう実家は怖くて居られない。お願いだからこちらで面倒をみてもらえないだろうか」

冗談ではないことは、義母の話す顔や目の動きをみてすぐに理解できました。これはかなり重症だろうなと。病院へ連れていかなければならないと思ってはいましたが、まさかこれほど急激に悪化するとは思っていなかったので、ちょっとした動揺もありました。

義母にはとりあえず我が家で数日過ごしてもらうことに。その間に病院へ連れて行く段取りをして、実家から荷物なども持ってきたり、いろいろと準備をしなければなりません。我が家は2馬力夫婦ですから、こういう時本当に大変で、お互いのスケジュール調整をすることになります。幸い私がフリーランスですから超柔軟に対応できます。持っている仕事は、それこそ隙間に入れてやってしまえば良いので。こういう仕事をやっていて良かったなと思う瞬間。

余談ですが、義母はお願いだからこちらに泊まらせてと言う割に、ほぼお泊まりに必要なもの、たとえば着替えや自分で使うものなど一切荷物を持たずにやってきたのです。そういうところを見ても、相当追い詰められた状態だろうなと感じました。

義母の家で“怪奇現象”を調査してきた結果

実家の状況を確認しに行きました。まずは家の外と隣のアパートからチェック。家の様子は全く何も変わっていない。雲の巣や雑草が私の背丈ほどに生い茂っている状態。普段ならこまめに庭の手入れもしていたと思いますが、これには少し違和感も覚えました。よほど余裕がないのかな?と。

隣のアパートですが、義母の言うような”拡声器”、私が判断するに“スピーカー”のことだと思いますが、そういう類のものはアパートのどこを探しても見つかりませんでした。当然そうだろうなと。

この時まで、私の頭の片隅には義母の様子や言動への疑念がありました。話や様子がいつもと違うし、話の内容も破綻していること。もしかして精神的なストレスなど、何かそちらの病気なのではないか?ということです。それが確信に変わったのはこの時でした。

「おかあさん、特に変なところはないと思うよ。音だって聞こえないし」

義母にこう話をしてみたところ、返事が返ってきました

「そうかしら?ほら、聞こえない?ゴーンゴーンって」

「ほら、私の名前を叫んで「お前が悪いー!」って叫んでるでしょ?」

「怖いわ〜」


妻と顔を見合わせた瞬間、二人とも何か言いたかったのですが、阿吽の呼吸でこの場をおさめることに終始しました。この時、義母が壊れそうな雰囲気だったからでしょう。

「おかあさん。一旦落ち着きましょう。とにかく何もないよ」

「ところでちゃん子はどこに居るの?いつものお出かけ?」

「え?ちゃん子は今居ないわよ。どこに居るのかしら?」

「え〜〜〜?いつから居ないの?」

「夏頃だったかな・・・」

「どこに行くのかも言わずに出てったの?」


「そう。私と口論ばかりしていて。嫌になったんでしょきっと。たぶん旦那(以下わかめ君)のところに行ったのかな〜」

「私にここ出て行け〜!って包丁をつきつけてきたり、すれ違う時にドン!と押してきたりして、わたし倒れそうになったりしたからさ。そういうことしてたんだよ、ちゃん子は」

「へ〜。ずいぶんだね」

「ところでおかあさん。まだ声とか音聞こえる?」

「あれ?今は聞こえない。あ〜良かった。今までずっと聞こえていたんだけどね。どく君のおかげだね。ありがとうね」

「まずは落ち着こうね。音は聞こえないから、安心して」


「わかった。でも夜になるとまたやり始めるからね。太鼓ドンドンと。玄関にたってわたしの名前を叫んで「出てこい!」とか言うからさ。怖いのよ」

「安心して」

「わかった」

衝撃的な展開でした。ちゃん子とわかめ君と義母についての騒動は、長い話になるのでまた機会を改めて書いてみます。

それにしても義母。やばいな!と瞬時に気が付きました。これは大事になりそうだなと。不安な要素が見えすぎて気持ちが暗くなってしまいました。



義母の言う“怪奇現象”について

昨日、義母から相談された例の「隣人がドンドン太鼓を叩く」とか、「自宅の柱がバリバリバリバリ〜」って鳴るという、いわゆる怪奇現象を調べてきました

先日、義母が帰宅した後、当然妻とはこの話について私たちなりに考察していました。

「おかあさんの話どう思う?」

「俺的には、俄かに信じがたいというのが率直な感想かな」

「私も同じ」

「あんなに難聴ひどくなっているのにね。耳元で大声出しても聞こえていない人が、そんな音聞こえるものなのかな〜。とかさ。いろいろ勘繰ってしまった」

「だいたいちゃん子(妹です)はどうしているの?」

「たまに家出しているから、またダンナの実家にでも行ってるんじゃないの?」

「おかあさんを置き去りで?」

「関係ないって感じなんじゃないの?」

「いつもながら無責任だよな、本当に」

「とにかく。一度行ってみるしかないね」


ということになりました。

介護の幕開け

突然、義母から相談がありました。ちょうどお昼前のこと。滅多に来ることがない義母が我が家へ訪ねてきました。

「隣のアパートの若夫婦が、夜中に太鼓をドンドン鳴らしてうるさいから困っている。家の中の柱もバリバリバリーって鳴るくらい振動がして・・・」

要約するとこんな話でした。もっと長い話でした。義母の話に入る前に簡単に説明します。義母が住んでいるのは妻の実家。戸建てで築60年以上。断熱材なんて入ってないようなものだと思うので、冬は外よりも格段に寒いというような家です。

夜中に隣のアパートから太鼓???義母の話は、にわかに信じがたい話。同席していた妻と一瞬顔を見合わ「・・・」となってしまいました。

「四六時中そんな感じなの?」

「いや、夜中だけ。近所の交番にも通報したし、隣のアパートの大家にも電話をしたけど、どちらとも「そんな事実はないと思う」て言うんだよ・・・」


話をよくよく聞くと騒音が耳から離れず、怖くて眠れない日が続いているとのことでした。それは大変だろうから、近々一度我々が行って確認してみるからということで落ち着かせ、その日はそのまま実家へ帰ってもらうことになりました。